学会のホームページ制作に失敗しないための業者選び

学会のホームページ制作に失敗しないための業者選び
筆者は長くホームページ制作に携わり、その過程で新規顧客だけでなく、ヨソのホームページ制作会社がしくじった案件を引き継いでやり直すということもかなり経験しました。とくに、学会のホームページなど継続性が求められる案件が多くありました。
本稿では、なぜ、専門業者が学会のホームページ制作でしくじるのか、なぜ、クライアントはそうした業者を選んでしまうのか、ならば、クライアントとしては、どんなホームページ制作業者を選べばいいのか、また一度選んだ業者とどう付き合えばいいのか、提案します。/div>

デザインはカッコいい。でも、・・・

ホームページ完成当初はカッコよく、何か誇らしい気分になるかもしれません。それが半年たち、一年過ぎるあたりで、さまざまなほころびが現われてきます。よくあるが以下に挙げた3点。

  • ホームページのページ数が増えるつれ、目的のページがどこにあるのか探しにくくなった。
  • どうもお問い合わせページが機能していないらしい。
  • エラーが出たので、対応を依頼したが、返答が遅い。

ホームページのページ数が増えるつれ、目的のページがどこにあるのか探しにくくなった

学会のホームページは時がたつにつれ、ページ数が増え、構造が複雑化していきます。そこを見越して、ホームページユーザーがいつでも読みたいページに直観的に辿り着けるように、ホームページ制作者はナビゲーションシステムを考えなければなりません。
ところが、日本では「デザイン」という言葉から「設計」という意味が抜け落ち、ただ「見た目のかっこよさ」というように解釈されます。Webデザインにはとくにその傾向が強いようです。そのためカッコよいテンプレートを選びがちです。テンプレートとは、どこかのWebデザイナーやエンジニアが設計したナビゲーションとデザインが一体化した雛形で、これがあるとホームページ制作が非常に楽なのです。
しかしテンプレートは個別の事情に配慮し、ナビゲーションを設計したわけではないので、長く使ううちにほころびが出てくるのは、いわば当然の帰結です。ならば、テンプレートを改造するという方法も考えられますが、そのためには、テンプレートの構造を詳しく分析し、的確にコーディングし直すことが必要となります。それはかなりの力量と時間を必要とすることです。後からテンプレートを改造するくらいならば、最初からクライアントに合ったテンプレートを独自に設計すればいいわけですが、ホームページ業者のスキルはピンキリで、テンプレートを設計できない業者はざらにいて、そういう業者がテンプレートを使いたがるというのが現状です。

どうもお問い合わせページが機能していないらしい

お問い合わせページをページを作るには、通常のホームページ制作技術の他に、お問い合わせ用のプログラムを書くスキルが必要です。お問い合わせページは学会のホームページに限らず、ほぼすべてのホームページで必須のものなので、ホームページ制作者なら誰でも、お問い合わせページぐらい作るスキルは持っていると思われるかもしれません。
しかしながら、たいていのホームページ制作会社では、営業(Webディレクター)、Webデザイナー、コーダー、エンジニア(プログラマー)と分業体制になっているため、エンジニアを除いてだれもお問い合わせプログラムにタッチしません。ですから、エンジニアがヨソの会社に移ったら、お問い合わせのフォーム部分しか作れず、メール機能が動かないという状態になります。
ちなみに、プログラムを書けないので、mailto にして、メーラーを立ち上げ、指定のメールアドレスへメールを発信させるやり方でごまかす業者が結構います。しかし、これでは mailto で指定したメールアドレスがスパム業者に漏れてしまい、毎日、大量のスパムメールに悩まされることになります。

エラーが出たので、対応を依頼したが、返答が遅い

エラーそのものはホームページ制作会社のミスとは限りません。制作時点ではノーミスであったとしても、時間がたち、ブラウザのバージョンアップやサーバープログラムのアップグレードなどで、エラーになってしまうことがあります。問題はエラーになること自体ではなく、えらーになった場合の対応のしかたです。
スキルのある業者なら、エラーの原因を説明し、対応策を提案します。スキルのない業者なら、エラーに対応できる人を探すことから始めなければなりません。

どんなホームページ制作会社を選べばいいのか

さて、もうおわかりのように、ホームページ制作に失敗する業者とは一口に言えば、スキルが低いのです。
とはいえ、そうした業者もかつてはそれなりのスキルを持っていたはずです。しかしホームページ制作のようなインターネット関連分野は、技術の進展が非常に速く、求められるスキルが変わっていきます。私たちのホームページ制作者は常に新しいスキルを学び続けなければなりません。同時に、手慣れたスキルも捨て去る決断をする必要もあります。

思うに、スキルの低い業者は新しいスキルの習得のしかたが中途半端で、うまく使いこなせないため、手慣れたスキルにしがみつき、結果、失敗しているようです。
もう一つ、問題があります。IT人材は流動性が高く、スキルがある人(とくにITエンジニア)ほど流出しやすいのです。ですから、いくら従業員が多くても、問題が起きたとき、社内で解決できるとは限らないのです。

こうした失敗業者には共通点があるように思えます。

  1. 専門家ぶって、自分たちが売りたいものばかり宣伝し、クライアント側のニーズを理解しようとしない。
  2. 実績ばかり強調し、クライアント側のニーズに応える方法論を提示しない。
  3. 営業(Webディレクター)ばかりが前面に出てきて、Webデザイナーやエンジニアなど実際に制作するスタッフが直にクライアントとコミュニケーションを取ろうとしない。

結局、上記3点を裏返せば、選ぶべきホームページ制作会社の姿が見えてきます。

  1. 自分たちのやり方を押し付けず、まず、学会からニーズを聞き取ろうとする。
  2. 実績にこだわらず、学会のニーズを満たすために最適な方法を提案する。
  3. 実際に制作に携わるスタッフがクライアントと直に接する。

ホームページ制作者として、筆者はとくに3番は重要な点だと実感しています。
仕事に行き詰まったとき、納期に間に合いそうもないときなど、まず、脳裏に浮かぶのはクライアントの顔なのです。
「あの人を困らせたくない」
「あの人をがっかりさせたくない」
そういう気持ちがここ一番の踏ん張りになっているように思います。

ホームページ制作会社との付き合い方

選んだホームページ制作会社とどう付き合うか、いちばん大切なことは、業者に丸投げせず、学会としてどんなホームページにしてほしいのか、ヴィジョンを示すことです。
学会のホームページができあがっていく各段階で、そのヴィジョンに近づいているかどうかを基準にして、ダメ出しをしてください。
また、お問い合わせページなどプログラム部分ができたら、本番前に自分が質問者になってお問い合わせテストをして、動きを確認してください。

まとめ

ホームページ制作における業者の失敗とは、デザインはきれいにできていても、

  1. ナビゲーションが悪く、目的にページへのリンクがわかりにくい
  2. お問い合わせページが動かない
  3. エラー対応への返答が遅い

といったことです。原因は業者のスキルが低いからですが、スキルの低い業者はやたら実績を強調し、専門家ぶって自分たちのやり方を押し付ける傾向があるようです。ですら、業者を選ぶ際は、以下の3点を基準にするといいでしょう。

  1. 自分たちのやり方を押し付けず、まず、学会からニーズを聞き取ろうとしているかどうか。
  2. 実績にこだわらず、学会のニーズを満たすために最適な技術を考えるかどうか。
  3. 実際に制作に携わるスタッフがクライアントと直に接しているかどうか。

ホームページ制作業者との付き合い方としては、まず、丸投げせず、学会としてほしいホームページのヴィジョンを貫いてください。そして、お問い合わせページ等プロクラム部分は自分でもテストしてみることもお忘れなく。


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