お問い合わせフォームから営業メール送信は合法か

お問い合わせフォームから営業メール送信は合法か
約1年前に書いたお問い合わせフォームを悪用した営業を阻止する方法に今なおアクセスが集まっています。
当時は、お問い合わせフォームから発信する営業メールをかけるのは、"頭のいいやり方"で、やったもん勝ちという風潮さえありました。そこに、一方的な営業にさらされる側から、「問い合わせフォームを趣旨を無視した営業メールは迷惑」というメッセージを込めて書いたのが、冒頭に紹介した記事 です。あれから状況もだいぶ変わってきたので、続編を書くことにしました。

お問い合わせフォームを利用した営業代行サービス

お問い合わせフォームを悪用した営業を阻止する方法 を書いた当初、支配的だった「お問い合わせフォームなんだから、(営業を含む)あらゆる問合わせに応じるべきだ」という身勝手な論調は、影を潜めるようになりました。しかしだからといって、お問い合わせフォームからの営業がなくなったわけではありません。それどころか、お問い合わせフォームを利用した営業代行サービスという新手のサービスが台頭してきました。彼らの言い分はこうです。

これまでのように、ホームページの趣旨を無視して、お問い合わせフォームにやみくもに営業メールを張り付けるのは、相手に不信感を持たれ、効果がない。営業代行サービスは、相手を動かすメール文を練り上げ、手動で、関連事業者のお問い合わせフォームから送信するので、営業効果が上がる。

ほんとうに「ホームページの趣旨」を尊重した上で、関連する営業をかけるのであればいいんじゃないか、と思われるかもしれません。しかし、ことはそんなに甘くはありません。代行業という性格上、ある程度、数をこなさなければ、成果は出ません。ですから、代行業者がホームページの趣旨を尊重するなどと手間をかけるはずはなく、クライアントの関連の業種であれば、バイトを使って、ひたすら、お問い合わせフォームから営業メールを送り続けるでしょう。

そもそも、お問い合わせフォームから営業メールを送り付けるのは、特定電子メール法違反の疑いがあります。

特定電子メール法

特定電子メール法とは、平成14年(2002年)より施行された、迷惑メールの送信を規制する法律で、正式には「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」といいます。

「特定電子メール」とは、同法第二条第二項で「電子メールの送信・・・をする者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。以下「送信者」という。)が自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メールをいう。」と定義しています。
さらに、特定電子メールの送信は、原則として、あらかじめ同意した者に対してのみに認められるとしています。これは「オプトイン方式」といい、平成20年(2008年)の改正で導入されました。ちなみに、それまでは、とりあえず送ってみて再送信拒否の通知があれば、送信をやめるという「オプトアウト方式」でしたが、これでは実質的に迷惑メールを規制できなかったため、改正されたのでした。
さて、「原則として、予め同意したものに対してのみ送信が認められる」オプトイン方式ですが、次のような場合は、例外して、特定電子メールを送信してもいいことになっています。

第三条 送信者は、次に掲げる者以外の者に対し、特定電子メールの送信をしてはならない。
一 あらかじめ、特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨を送信者又は送信委託者(電子メールの送信を委託した者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。)をいう。以下同じ。)に対し通知した者
二 前号に掲げるもののほか、総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを送信者又は送信委託者に対し通知した者
三 前二号に掲げるもののほか、当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者
四 前三号に掲げるもののほか、総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては、営業を営む者に限る。)

平たく言うと、以下の人なら、営業メールを送ってもOKということです。

第一項は、予め「営業メールOK」と通知した人
第二項は、(たぶん名刺交換などで)業者に自分のメールアドレスを通知した人
第三項は、取引関係がある人
第四項は、ホームページやブログ上でメールアドレスを公開している人

です。
第四項は注目です。ホームページにメールアドレスを表示しているだけで、その意図とは関係なく、一方的に営業メールを送り付けられても文句はいえないのですから。

ただし迷惑メール相談センターは、第四項の例外扱いを解除する方策を提示しています。
それは、(このメールアドレスへの特定電子メールの送信を拒否いたします)という一文を添えるというものです。

迷惑メール相談センター「特定電子メール法」

なんと、牧歌的な方策でしょう!
基本的に、ホームページ上にメールアドレスを公開するのは、お問い合わせや連絡を受け付けるためで、営業メールを受けるためではないのに・・・。
だいたい、「特定電子メール」とはなんのことかわからない人が大半なのに・・・。

ところで、お問い合わせフォームから営業メールを送り付ける業者は、この第四項を根拠に、自分たちの行為を正当化しています。
しかし第四項は、ホームページやブログ上でメールアドレスを公開している場合に限定しており、お問い合わせフォームは含みません。そもそも、お問い合わせフォームには、受信先のメールアドレスは表示されていません。どう見ても、ホームページ上でメールアドレスが公開されているとはいえません。
お問い合わせフォームから営業メールを送信する業者は、この点を無視しています。
お問い合わせフォームに設置しているメールアドレスは、オプトイン規制により保護させるべきメールアドレスであり、このメールアドレスに営業メールを送り付けるのは、違法行為の疑いが濃厚です。

営業メールを拒絶する2種類の仕掛け

前段で、お問い合わせフォームから営業メールを送り付けるのは違法性が高いと述べました。
しかも、特定電子メール法違反は、法人の場合、3000万円以下の罰金が課せられます。
しかし、それでも「営業に関するお問い合わせだ」と勝手な理屈を付けられないように、やはり「営業メールは迷惑である」旨を宣言しておくべきだと思います。
そのうえで、営業メールを拒絶する仕掛けをしてはいかがでしょう。仕掛けには2種類あります。
いずれも、問い合わせフォームを作るのが前提です。
まだ、お問い合わせフォームがない人は、これを機に是非、ホームページ制作業者にお問い合わせフォームを作ってもらいましょう。1万円くらいで作ってもらえるはずです。もしこれより高いのであれば、その業者はプログラマーがいないため、外注し、マージンで稼いでいると考えたほうがいいでしょう。

仕掛けA 宣誓

宣誓とは、お問い合わせフォームの最後に、「これはお問い合わせであり、営業メールではありません」という宣誓文を付け、ここにチェックを入れないと、メールが送信されないしくみです。
「じゃあ、チェックさえ入れれば、営業メールだって、送れてしまうじゃないか」とお思いの方もいるかもしれません。その通りなのですが、宣誓を求めている分、ただ、(このメールアドレスへの特定電子メールの送信を拒否いたします)などと書いておくより、相手に対するプレッシャーは高まります。(トップイメージ参照)

仕掛けB 文字数制限

平気でウソの宣誓をする輩を心配される向きには、こちらがお勧めです。
営業メール本文は、お問い合わせん内容を書くテキストエリアに書き込まれる傾向があります。テキストエリアは見た目が数行分も高さがあり、たくさん書ける印象があるからでしょう。じつは、このテキストエリアは、見た目とは関係なしに、文字数を制限することができます。例えば、1000字以内とした場合、営業メールはアウトです。営業メールは相手かまわず、だらだらと自社のことを書き並べた文章を貼り付けるため、1000字をはるかに超えてしまうからです。だからといって、代行業者やバイトが内容をコンパクトにまとめるなどということはしません。
これにより、ほんとうに問い合わせをしたい人と、一方に営業したい人と峻別することができます。

まとめ

「特定電子メール法」は予め、同意していない者に、営業メールを送信することを禁じています。例外として、なぜか、ホームぺージやブログ上で公開したメールアドレスにはOKということになっています。ですから、お問い合わせフォームに設置されたメールアドレスへの営業メールの送信は違法行為の疑いが高いといえます。
よつて、営業メールを受信したくないのであれば、まず、お問い合わせフォームを作りること。次に、営業メールを拒絶するという意思表示を明確にすること。さらに、ひと手間かけて、業者からの営業メール送信を拒絶する仕掛けを付けることもできます。


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