学会の著作権の扱いを考える際に参照すべきリンク

学会の著作権の扱いを考える際に参照すべきリンク
学会員の論文を掲載する場合、著作権法を視野に入れた著作権規定を明確にしておく必要があります。
そのためには具体的にどうすればいいのか。本稿ではそのヒントとなるリンクを紹介します。

学会の著作権の扱いを考える際に参照すべきリンク

1. 著作権法

e-Gov(電子政府)が掲載している著作権法の全文。最新の改正も適宜、条文に反映されることになっています。
ブラウザで閲覧するので、検索・印刷もできます。

2. 澤田将史 学術論文の利用と著作権-平成30年改正により何が変わるか-

J-STAGEセミナー 2018年10月31日

文化庁で著作権調査官を務める澤田将史弁護士によるセミナー用スライド。
表題にある平成30年改正のほか、著作権法の概要を分かりやすく解説しています。
とくに学術論文めぐる裁判の事例を示し、具体的に著作権法の解釈を示しているので、著作権法入門として最適です。

3. 藤田節子 国内科学技術系学会誌の投稿規定の分析:参照文献の記述, 著作権を中心として(I)

『情報管理』48巻10号 2006年

藤田節子 国内科学技術系学会誌の投稿規定の分析:参照文献の記述, 著作権を中心として(II)

『情報管理』48巻11号 2006年

2005年に藤田節子氏が行った学会誌の投稿規定の調査結果に基づく分析。
国内科学技術系の127学会199誌を対象に、著作権の帰属など18の記載項目を調査分析しています。
当時顕著になりつつあった電子ジャーナルや電子投稿を視野に、あるべき規定を提言している点が注目されます。

4. 新谷由紀子、菊本虔 自然科学系の学術論文は著作物となり得るか -- 自然科学系の学術論文と著作権の関係について --

『知財管理』Vol.64 No.2 2014年

この論文の主張は3点あります。
1点目は、著作権法の条文の規定と判例、及び論文の普及による研究の進展という面から「自然科学系の原著論文については,著作権の対象として保護される可能性が低く,むしろ,全体として論文の著作物性を否定するべき」というもの。
2点目は、学術論文の著者の正当な利益が侵害されたときは、「裁判所の判断を求めるのではなく,学界内部にその救済機関を設置しプライオリティの判断や著者の名誉の保護を目指すべき」というもの。
3点目は、EU各国では著作権に加えてデータベースの投資者に独自の権利を与えているが、これは「著作権類似の権利の拡充を認めるものであり,特に,学術研究に対する重大な障害になるおそれがあるので,慎重,かつ,広範な議論を要する」というもの。
著作権法が著作権の保護に偏りがちで、著作権をそのまま学術論文に適応したら、論文の普及を妨げ、研究の進展を遅らせるという側面があることを考えると、この論文が提起する論点は非常に重要です。

5. 栗原 佑介 オープンアクセス時代における学術論文の著作権管理に関する一考察

『パテント』Vol.70 No.5 2017

オープンアクセスとは、情報の無償公開と共有化のこと。学術論文は元々共有化を前提としていますが、オープンアクセス時代においては「研究者は,CCL などの活用,IR への登録といった協力が考えられ,学会は,OA のための学会誌の公開,IR 登録の場合の著作権利用許諾規定の新設などの取組みが求められる」としています。CCL とはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのことで、著作権法に準じ、著作者が自分の著作物の利用ルールを明示し、そのルールに従えば、その著作物を許可なく自由に使ってよいとする方法です。IRとは、公的助成による研究成果(論文・研究データ)や博士論文を登載する大学の機関リポジトリのこと。
全体として、次世代の学術論文の著作権管理のあり方について論じています。

まとめ

学会の著作権の扱いを考える際、まず、著作権法を読み、理解しなければなりません。さらに学術雑誌が紙媒体から電子媒体にシフトしている現状から、電子投稿にふさわしい投稿規定が必要です。また、学術論文は著作権に固執するよりも、広く普及させることのほうが学問の進展に寄与するという性格上、オープンアクセスを目指したしくみが求められます。


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